質問紙やWebフォーム等を使って行われるアンケート調査という手法は、不特定多数に対して同じ質問をする調査法です。
しかし、質問の回答形式(選択回答や自由回答など)によって特性は大きく異なる為、それらの特性、及び集計分析方法まで見通したアンケートの作成が求められます。
そこで今回は、回答形式の種類、各回答形式の特性、そして自由回答における効率の良い集計方法を解説していきます。
どのような形式のアンケートを作ろうか迷っている方、またアンケート集計の効率化を試みたい方はご覧ください。
回答形式の種類
Web上においては、以下のように会員退会フォームでアンケートを見かけることが多いかと思います。そこで、回答形式ごとに簡単に作成しました。
選択回答Ver.
順位回答Ver.
Q:退会する理由を、当てはまる順に3つ選択して下さい。
自由回答Ver.
上記のように、Webフォームを使用したアンケートには大きく3つの回答形式があります。
どれも退会する理由を求めていることは同じですが、得られる回答の性質、回答ハードル、そして適した集計方法は、大きく異なります。
回答形式ごとの特性
回答形式ごとに、回答者と集計者の目線から長所と短所、そしてそれぞれについて適した集計方法を表にまとめました。
選択回答や順位回答は、回答のハードルが低く解答率が高い反面、リスクもあります。
例えば、冒頭で示した退会フォーム「選択回答Ver」では「経済的な理由」が最も選ばれ易くなる傾向があります。
退会を希望するユーザーはアンケートへの回答のモチベーションが低く、面倒で一番上を選択する人が多くなるからです。
実際に、選択肢の順番をただ変えただけで、集計結果が変わった事例もあります。
一方で自由な回答を入力できる自由回答では、ユーザーの率直な意見が得られます。
これらのアンケート結果はホームページの改善に活用することができます。
参考:ランディングページ改善に活用したお客様アンケート4つの効果
自由回答の集計方法はマインドマップへの落とし込みが有効です。
このように内容ごとに分類することによって、内容ごとの総数の明確化ができ、問題点を視覚的に捉えることができます。
もちろん、質問内容やサービスの業種、何についてのアンケートかによって分類項目は変わってくると思います。
しかし、自由回答の内容を一つ一つ読んで分類していくのは明らかに非効率です。
そこで以下からは、自由回答で得られたデータを効率よく集計し、マインドマップに落とし込んでいく手順を紹介します。
自由回答の効率の良い集計手順
エクセルを使い、以下の手順で作業していきます。
- 無回答、意味不明な回答の除去
- 頻度が高い回答の除去
- 改行の除去
- 分類項目の決定
- 昇順&文字数ソート
無回答、意味不明な回答の除去
無回答による空白や、参考にならない意見は最初に除いてしまい、集計効率を高めましょう。
エクセルをテーブル化(Ctrl+T)し、フィルター機能を使って「空白セル」や「あ」などを抽出します。
それらを別のエクセルシートへ切り取ることで行数を減らしていきます。
削除するのではなく別のシートへ切り取っておくことにより、後ほど無回答や意味不明な回答の数を数えることができます。
頻度が高い回答の除去
「特になし」「特に無いです」「ありがとうございました」「また入会します」など、自由回答によく見られる回答を除去します。
先ほどと同様に除いても良いですが、フィルターの「検索」を活用するとより効率がアップします。
例えば下記のように「特に」と検索すれば、「特に」という言葉が入っているものだけが表示されます。
改行の除去
中には改行が何回もされている回答があり、セルの行の高さがバラバラになっている場合があります。
そこで関数を使って改行を全て外し、視認性を向上させます。
右隣に「改行除去」の列を作っておき、「=CLEAN(改行を除くセルを選択)」と入力すると、改行がすべて外れます。
一行になることでセルからはみ出してしまうのが気になる方は、「ホーム」タブの「折り返して全体を表示する」をクリックして下さい。
改行ではなく「折り返し」という形で文章がセル内に収まります。
改行が含まれる文章をマインドマップにコピー&ペーストした場合、エクセルでは一つのセルでも、マインドマップでは複数に分かれてしまう為、それを防ぐ意味もあります。
分類項目の決定
以上までの手順でデータがだいぶスッキリした形になったと思いますので、ここでマインドマップにおける分類項目を決めると良いでしょう。
昇順&文字数ソート
回答を昇順(あいうえお順)にし、かつ文字数が少ない順にソートすると、同じような内容の回答が固まって並びます。
まず昇順にソートします。
右側に「文字数」列を作っておき、「=LEN(文字数をカウントしたいセルを選択)」と入力すると、文字数が表示されます。
再び文字数で昇順のソートをかけ、文字数が少ない順に並べ替えます。
すると同じような内容が並びますので、まとめて抽出することができます。
以上のようなステップにて回答を機械的に抽出していくことで、一つ一つ回答を読んで分類していくよりは、はるかに効率が良いはずです。
最後に
アンケート作成時において回答形式の特性は押さえておくべきですが、もっと根本的な問題として注意しなければならないのは「スケールアウト」です。
今回のような退会フォームを例にすると、集計結果として現れるのは「あくまで退会を希望した人の意見」です。
よって「Q:サービスに満足できましたか?」という質問をしても参考にはなりません。
継続してサービスを利用しているユーザーの意見が欠如しており、否定的な意見に偏ると考えられる為です。
このように「短い物差しで端っこの方だけ測った」状態をスケールアウトと言います。
集計結果だけの高低、割合だけでは議論できない場合があるということも、アンケート調査においては注意しなければなりません。
